更新日 2025年6月12日
この記事では現役の司法書士が、司法書士の開業準備、資金調達、場所、必要なものをまとめています。
開業する司法書士の方はぜひご覧ください。
【1】開業のための必須手続き
司法書士が開業するためには以下の2つの届出が必要になります。
(1)所属司法書士会への登録・開業届
- 勤務先を辞めて独立する場合でも、管轄の司法書士会に「事務所の設置届」を提出する必要があります。
(2)法務局への届け出
- 開業にあたり、事務所所在地を所轄の法務局(登記所)へ届出します。
【2】物的準備(設備)
(1)事務所
外部から業務が行われていることが分かる状態(表札・看板など)である必要があります。
1人だけの小さい事務所で開業するのであれば表札だけでも十分でしょう。
(2)登記業務に必要な設備
- パソコン(Windows推奨)
MACは非対応のソフトが多々あります。
ハードディスクはバックアップのために外付けも - インターネット環境
- プリンター・スキャナー、FAX
A3がプリントアウトできる複合機がベストです。
ドットプリンターもあればなおよしです。 - 電子証明書(商業登記オンライン申請で必須)
- 電子申請ソフト(法務省提供 or 司法くん、権、サムポローニア等)
(3)職印(実印)
登記申請などに使用する司法書士個人の職印が必要です。
司法書士の登録をする際に届け出ていますので、登録即開業する方のみ職印を作成することになります。
【3】ソフトウェア・システム
- 登記申請ソフト(登記ねっと「供託オンライン申請システム」など)
- 業務支援ソフト(司法くん、権、サムポローニアなど)
- 会計ソフト(freee、弥生会計など)
【4】保険・契約関係
- 司法書士職業賠償責任保険(所属会で加入することが多い)
- 各種契約(事務所の賃貸契約、インフラ契約など)
【5】営業・広報
- 名刺、事務所パンフレット
- Googleマップ登録(任意)
- メールアドレス(gmail、プロバイダ、独自ドメインなど)
- ホームページ
ホームぺージは月額1,980円で作成できるイチマイがお得で士業専門のため本格的です。 - SNS活用(X、Facebookなど)
【6】その他
- 銀行口座(屋号付き口座を開設する司法書士も多い)
近年、屋号付きの銀行口座の審査が厳しくなっています。 - 領収書・契約書等の帳票類
- 書籍(登記六法、最新の登記実務書など)
【参考:あった方が良いもの、後々用意しても良いもの】
- 電子認証キット(ICカードリーダー等)
- 裁判用書式集・申立書ひな型集
- 金庫・鍵付き棚
なるべく早く用意したほうが良いでしょう。登記識別情報や印鑑証明書など大事な書類を預かることがあります。 - オンラインストレージ(Dropbox, Google Drive等)
司法書士が開業する際の費用は、「自宅開業」と「賃貸事務所開業」で大きく異なります。以下にパターン別の開業費用の目安と内訳を分かりやすくまとめました。
次に開業費用の目安を記載します。
【1】自宅開業の費用目安(簡素型)
- 概算総額:30万円〜70万円程度
主な内訳
項目 | 金額(目安) | 備考 |
---|---|---|
職印(実印) | 約2〜3万円 | チタンや黒水牛など素材により変動 |
名刺・看板類 | 約1〜2万円 | 名刺1,000枚程度+表札シールなど |
パソコン・プリンター | 約10〜15万円 | 既に所有している場合は0円も可。プリンターはA3が印刷・スキャンできるものが望ましいです。契約書や登記原因証明情報などがA3であることが多いです。 |
スキャナー・ICカードリーダー | 約1〜3万円 | 電子申請対応用 |
書籍(実務書・六法等) | 約2〜5万円 | 実務経験に応じて調整 |
登記申請・業務ソフト | 約3〜10万円 | 有料ソフトの場合、月額課金が多い |
会計ソフト・管理ツール | 約1〜3万円(初期) | 月額制(freeeなど)もあり |
各種届出・登録費用 | 約3〜5万円 | 登録免許税、印紙代等を含む場合も |
開業時広告・ホームページ | 月1,980円(イチマイで作成) 他社は月3,300円〜1万円。 | イチマイなら格安でホームページを作成します。 月3,300円はSAMURAI PRESSです。 |
書類保存棚・文具類など | 約1〜5万円 | 郵送・押印・製本などで使用 |
ポイント
- 自宅の一室を事務所に充てる場合は賃料不要
- 一人で静かに始める方向け。なるべく経費を抑えたい人におすすめ
【2】賃貸事務所での開業費用目安(標準型)
- 概算総額:100万円〜200万円程度
主な内訳(上記に加えて発生する分)
項目 | 金額(目安) | 備考 |
---|---|---|
事務所の敷金・礼金 | 約20〜50万円 | 家賃の2〜3ヶ月分が多い |
初月家賃・共益費 | 約5〜15万円 | 都市部ほど高額になる傾向 |
内装・電気・ネット工事等 | 約10〜30万円 | 最小限に抑えた場合 |
什器(机・イス・棚など) | 約5〜20万円 | 中古品やIKEA等で節約可 |
電話・FAX等通信環境整備 | 約2〜5万円 | スマホ兼用なら削減可能 |
看板制作・掲出費用 | 約3〜10万円 | 法律上、外部表示が必要 |
セキュリティ・鍵管理等 | 約1〜5万円 | 防犯意識に応じて調整 |
ポイント
- 「お客様を迎える事務所」として整備されるため、家賃・初期費用が最も大きな差になります
- 家賃を経費にできる分、法人化や経理面では有利なことも
【3】補足:その他費用
- 日本司法書士会連合会への登録料:約3万円(既登録者は不要)
- 支部会費(月額 or 年額):年間で数万円(地域による)
- 職業賠償責任保険料:年額2〜3万円程度(加入推奨)
- 銀行口座開設、印鑑証明、開業届提出などは無料〜数千円
【まとめ比較】
開業タイプ | 初期費用の目安 | 主な違い |
---|---|---|
自宅開業 | 約30〜70万円 | 家賃不要・小規模で始められる |
賃貸事務所開業 | 約100〜200万円 | 信頼感・営業性があるがコスト増 |
次に司法書士が開業する際の資金調達方法を記載します。
司法書士の開業時の資金調達方法
司法書士が開業する際の資金調達方法には、自己資金に加え、各種の公的融資・民間金融・親族借入などがあります。ここでは、それぞれの方法についてメリット・注意点とあわせて具体的に解説します。
【1】自己資金(貯金)
● 特徴
- 最も手続きが不要で即時利用可能。
- 借入がないため精神的な負担が軽く、利益はすべて自分のもの。
● メリット
- 無利息・無審査
- 融資審査の信用力にもつながる(自己資金が多いほど有利)
● 注意点
- 生活費を削りすぎないこと(最低でも6か月分の生活費を残すのが理想)
【2】日本政策金融公庫(創業融資)
● 概要
- 国が運営する金融機関。「新創業融資制度」などは無担保・無保証人で最大3,000万円まで可能(実績では300〜800万円程度が一般的)
● 対象
- 開業前または開業直後(原則、創業後税務申告前まで)
● メリット
- 金利が比較的低い(1〜2%台)
- 開業直後の無担保・無保証人も可能
- 実務経験を重視されるため、勤務司法書士経験者は有利
● 注意点
- 審査に1か月程度かかることがある
- 事業計画書、資金繰り表などの提出が必要
【3】自治体の制度融資(信用保証付き)
● 概要
- 地方自治体が実施する創業支援融資制度(各都道府県・市区町村が提供)
● 特徴
- 信用保証協会が保証人となり、民間銀行が融資を実行
- 多くの場合、利子や信用保証料の一部を自治体が補助
● メリット
- 実質的に金利ゼロになる制度も(例:東京都の制度融資)
- 公庫よりも地域との連携が強くなる
● 注意点
- 金融機関+保証協会+自治体の三者審査が必要
- 公庫に比べて手続きが煩雑なこともある
【4】親族・知人からの借入
● メリット
- 信用審査不要・柔軟な返済条件
- 金利ゼロまたは低利の交渉がしやすい
● 注意点
- 金銭トラブルに発展するリスクがあるため、「借用書」を必ず作成する
- 利息のない借入でも税務上「贈与」と見なされないよう注意
【5】民間金融機関(銀行・信用金庫など)
● 特徴
- 開業当初は融資のハードルが高い(実績重視)
- 司法書士法人を設立して複数年経営実績があれば有利に
● 注意点
- 開業直後では実質的に使えないことが多い
- 審査期間が長く、担保や保証人を求められる傾向あり
【6】補助金・助成金(※活用難易度は高い)
● 例:
- 小規模事業者持続化補助金(上限50万円〜200万円)
- 創業支援型助成金(地域限定で実施されることあり)
● 注意点
- 後払い制が基本(先に自己負担が必要)
- 申請書類の難易度が高く、採択率も低め
【7】その他の選択肢
- クラウドファンディング(信頼性と発信力が必要)
- リースやレンタルによる初期設備の分割導入(PCや複合機など)
- 副業・非常勤業務との併用(開業初期の生活資金確保)
【まとめ:おすすめ組み合わせ】
開業タイプ | 資金調達のおすすめ構成 |
---|---|
自宅開業 | 自己資金 + 少額の公庫融資(100〜150万円) |
賃貸開業 | 自己資金 + 公庫 + 自治体制度融資(合計200万円前後) |
節約型開業 | 自己資金 + リースや中古備品で初期費用を抑える |